Le Thoumieux/トゥーミュー

定評あるブラッスリー・トゥーミューを訪れる客の多くは、その階上に全15室のホテルがあることに気付かないのだが、評判は口コミで広がりつつあるようだ。インディア・マダヴィがデザインした客室は、やたらと派手でカラフルでケバケバしいのに、何故かしっくりとくる出来栄え。全客室のベッドに置かれたトレードマーク的な豹柄の掛け布も、見慣れると愛着が湧いてくる。

ホテル・トゥーミューでの滞在は、芸術家肌の過激なフランス人の友人のアパートに泊めてもらうような気分。しかし、ルームサービスもあればイソップのバスアメニティもあり、各室にイリーの最新モデルのエスプレッソマシンまで備えてある。 客室は10平米からと小ぶりだが、室料もそれに見合う安さだ。

パリの7区といえば、エッフェル塔以外に見るべきものがないのだが、ホテル・トゥーミュー周辺の通りはなかなか魅力的で興味をそそられる街並みだ。サン・ドミニク通りには小さなショップや小粋なカフェ、ブラッスリーが軒を連ね、通り自体に一見の価値がある界隈となっている。観光客の多くは、パリを十分味わうためにサンジェルマン・デプレを中心としたルーブル近辺に泊まらなければならないと思っている節がある。しかし実は7区は街歩きの恰好の拠点である上に、パリっ子の暮らしに近い体験が楽しめるエリアなのだ。

ブラッスリー・トゥーミューの“パリ式”のサービスは有名。横柄で無愛想な接客を覚悟して行く必要はあるが、これもまたパリの魅力のひとつと考えよう（態度の悪いタクシー運転手や味気ないロティサリーチキンと同様に）。

チェックイン時には、2階のロビーまで自分でスーツケースを抱えて階段を上がることになるが、ブラッスリーのスタッフに頼めば手を貸してくれる（このホテルにはエレベーターが付いていない）。